
トレーニングをするとき、指導者が考えなければならないことがあります。
それは、どのくらいの負荷を掛けるのかということです。
同じスクワットでも、10回行うのか、20回行うのか。
ゆっくり丁寧に行うのか、少しスピードを意識するのか。
休憩を十分に取るのか、短い時間で次の種目に移るのか。
ちょっとした違いですが、選手に掛かる負担は大きく変わります。
トレーニングは、たくさんやればよいというものではありません。
ここに指導者の匙加減があると思います。
① 全員に同じ負荷を掛ける必要はない
チームでトレーニングをすると、どうしても全員に同じ回数、同じ時間を設定しがちです。
もちろん、全員で取り組むことには意味があります。
ただ、選手によって体力も筋力も違います。
同じ中学生でも、体格や成長段階はそれぞれです。
10回で十分な選手もいれば、余裕を持って取り組める選手もいます。
だからといって、できる選手にどんどん負荷を掛ければよいわけでもありません。
大切なのは、今のその選手に合った負荷を考えることです。
② 少しきついくらいが、ちょうどよいこともある
トレーニングには、ある程度の負荷が必要です。
楽にできることばかりでは、体に変化を起こす刺激として足りない場合もあります。
一方で、限界まで追い込めばよいという考え方も違うと思います。
例えば、スクワットを20回行うとします。
最初の10回はきれいなフォームでできていたのに、15回を過ぎたあたりから膝や腰の位置が崩れてくる。
それでも回数を達成させることに意味があるでしょうか。
私は、そうは思いません。
回数を終えることよりも、正しい動きを身につけることの方が大切です。
フォームが崩れ始めたら、そこで止める、回数を減らす、休憩を入れる。
そうした判断が必要になります。
③ 負荷を上げるタイミングを見極める
いつまでも同じ負荷では、選手の成長に合わせられません。
反対に、急に負荷を上げることも避けたいところです。
例えば、最初は10回から始める。
余裕を持って正しいフォームでできるようになったら、少しずつ回数を増やす。
あるいは、回数は変えずに動作を丁寧にする。
こうした段階的な変化をつけていきます。
負荷を上げる方法は、回数を増やすだけではありません。
● 動作を少しゆっくりにする
● 正しい姿勢を保つ時間を延ばす
● 種目を少し難しくする
● 休憩時間を適切に調整する
選手の状態を見ながら、少しずつ変えていけばよいと思います。
ただし、休憩を短くすることだけで負荷を上げようとしないことも大切です。
④ 指導者は選手の表情や動きを見る
トレーニング中、指導者は回数を数えるだけではいけません。
選手の表情、動き、呼吸、疲労の様子を見ておく必要があります。
いつもより動きが悪い。
集中力が続いていない。
フォームが崩れている。
こうした変化に気づけるかどうかです。
特に成長期の選手は、日によって体の状態が違うこともあります。
前回できたことが、今日はうまくできないこともあります。
そんなときに、無理に前回と同じことを求める必要はありません。
体調が悪いときや痛みがあるときは中止し、必要に応じて専門家に相談することも大切です。
選手の状態に合わせて負荷を調整することも、立派な指導です。
⑤ 頑張らせることと、無理をさせることは違う
指導者として、選手には頑張ってほしいと思います。
少し苦しいところを乗り越える経験も、もちろん大切です。
ただ、苦しそうにしている選手を見て、さらに追い込むことがよい指導とは限りません。
トレーニングの目的は、選手を疲れさせることではありません。
体を強くし、野球のパフォーマンスにつなげることです。
そのためには、練習後の疲労や翌日の状態も考えなければなりません。
試合が近いとき、連日の練習で疲労がたまっているときなどは、負荷を落とす判断も必要です。
休むことも、トレーニングの一部だと思います。
⑥ 最後は指導者の匙加減
トレーニングには、決まった正解が一つだけあるわけではありません。
同じメニューでも、選手によって適切な負荷は違います。
また、同じ選手でも、その日の体調や疲労によって変わります。
だからこそ、指導者が選手をよく見ておくことが大切です。
今日は少し頑張らせてみよう。
今日は負荷を落として、動きを確認しよう。
この選手はもう少しできそうだ。
この選手は、今は無理をさせない方がよい。
こうした判断の積み重ねが、選手の成長につながっていくと思います。
トレーニングは、負荷を掛けることが目的ではありません。必要な負荷を、必要なタイミングで掛けることが大切です。
選手を追い込むことだけが指導ではない。
頑張らせるところと、抑えるところ。
その見極めこそ、指導者の腕の見せどころではないでしょうか。
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